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奈良地方裁判所 平成3年(行ウ)7号 判決

原告

辻山信子(X)

右訴訟代理人弁護士

北岡満

被告

桜井市選挙管理委員会事務局長 井上孝司(Y)

右訴訟代理人弁護士

田中義雄

事実及び理由

第三 争点に対する判断

一  本件支出行為について

前記第二の一3のとおり本件支出の相手方は、連合会であり、また、本件支出金は、本件理事会並びに研修会出席負担金(支出費目は負担金補助及び交付金)として支出されている。そこで、連合会並びに本件理事会及び研修会について検討する。

1  連合会について

連合会は市区の選挙管理委員会業務の円滑な運営、法規改廃の意見交換、関係機関への要望実現等を図ることを目的として全国市及び東京都特別区の選挙管理委員会によって組織された団体であり、各市区の選挙管理委員会から会費を徴収し、選挙に関する調査研究、各市区の選挙管理委員会相互の意見交換等の業務を行い、年度毎に各地で理事会及び研修会を開催している(〔証拠略〕)。

2  本件理事会及び研修会について

(一)  前記第二の一2のとおり本件理事会及び研修会は、平成二年一〇月二四日、徳島市において開催された。本件理事会においては、午前一〇時ころから午後一時四〇分ころまで「平成二年公職選挙法等に関する新規要望事項の取扱いについて」と題する議案の議事等が行われ、本件研修会においては、午後一時五〇分から一時間ほど自治省選挙部牧之内管理課長の講演が行われた。その後、午後三時から五〇分ほど郷土芸能紹介がされ、午後六時からは一時間三〇分ほど懇親会が行われてその場では食事とアルコール類が出された、理事でない市区選挙管理委員会もオブザーバーとして本件理事会への出席が認められており、また、本件研修会への参加も認められていた。(〔証拠略〕)

なお、芸能紹介には、委員三九一名・職員二七五名の合計六六六名が出席しており、本件懇親会には、委員・職員六五八名、同伴者八名が出席した(〔証拠略〕)。

(二)  本件理事会及び研修会に関する収入は、八五六万八〇〇一円であり、そのうち四四九万四〇〇〇円が出席者負担金で、その余は連合会、連合会四国支部、開催市である徳島市からの負担金、徳島県からの補助金で賄われている。支出は、同額の八五六七万八〇〇一円であり、その内訳は、懇親会費四〇四万六〇〇〇円(一人当たり六〇〇〇円の料理(酒二本、ビール一本、税・サービス料を含む)×六六六名分と使途不明の五万円)、昼食代七二万円(一〇〇〇円×七二〇名分(郷土芸能出席者も含む))、郷土芸能出演者謝礼三〇万円、出席者記念品料三七万五〇〇〇円(五三五円七五銭×七〇〇枚)、その他として会場、バス借上料等合計三一二万七〇〇一円である。(〔証拠略〕)

(三)  前記第一の一2のとおり、当初は当時の土佐委員長、川谷委員、被告の三名が右研修に参加する予定であったが、土佐委員長が欠席したため、石本職員が代わって出席している。

(四)  前記第二の一3のとおり、被告は、平成二年一〇月一五日、「全国市区選挙管理委員会連合会理事会並びに研修会出席負担金」を支出目的として一万四〇〇〇円(一名七〇〇〇円×二名分)の支出負担行為をし、同月一六日、右負担金は連合会に支払われた。なお、右一万四〇〇〇円の支出費目は負担金補助及び交付金であり、研修費は二名分しか支出されておらず、川谷委員は右研修につき自費で参加している。

(五)  理事会の翌日である二五日から、開催市の徳島市選挙管理委員会委員長名及び東急観光株式会社徳島支店長名で「研修視察」として、日帰りと一泊旅行の案内が送付され、参加希望者は、別途七七〇〇円ないし三万二〇〇〇円の負担をすることとされた(〔証拠略〕)。そして、土佐委員長の妻、川谷委員夫妻、被告、石本職員の五名が、右一泊旅行に参加している(〔証拠略〕)。

(六)  土佐委員長は、川谷委員、石本職員及び被告に対し、平成二年一〇月二四日から二六日にかけて旅行命令を発し、同人等に右三日分の日当と二泊分の宿泊費及び鉄道賃が支給された(〔証拠略〕)。右支出につき原告から監査請求があり、監査委員は、平成三年一一月二五日付けで二五日の宿泊費及び二六日の日当の合計二万九六〇〇円を返還させる措置を講じるよう勧告し、右三名は、二万九六〇〇円を返還した(〔証拠略〕)。

二  以上の事実を前提に検討する。

1  本件支出金は、本件理事会及び研修会の運営費用として連合会に支出されているが、その運営費の割当は本件理事会及び研修会に出席した委員及び職員の人数に応じて行われている。したがって、本件支出金は、本件理事会及び研修会への参加費用としての意味合いと本件理事会及び研修会の運営のための補助金としての意味合いを含んだものと考えられる。

2  そして、本件支出金を本件理事会及び研修会への参加費用とみた場合、右一2(一)のとおり、本件理事会では選挙制度に関する議事が行われていること、本件研修会では選挙部管理課長の講演が行われていること、懇親会には市区の選挙管理委員及びその職員が多数参加して情報交換が行われたと認められること等からして、本件理事会及び研修会に参加する費用は地方自治体の事務を処理するために必要な経費(地方自治法二三二条一項)に当たるというを妨げない。

また、補助金とみた場合も、右一1のとおり連合会は桜井市選挙管理委員会が構成員である公的な団体であり、右一2(一)のとおり同市選挙管理委員会の委員及び職員が参加している本件理事会及び研修会につき、その運営が円滑に行われるために同市が補助金を支出することは、公益上の必要がある場合(同法二三二条の二)に該当するということができる。

3  原告は、前記第二の二2のとおりの主張をして本件理事会及び研修会は私的な性格のものだから、それに対する支出は違法であると主張している。

しかし、以下の理由により原告の主張は採用できない。

(一)  本件理事会及び研修会の翌日から行われた「研修視察」と称する旅行の支払先は連合会ではなく観光会社であり、本件理事会及び研修会とは別個のものと考えられる。

(二)  一〇月二四日は午前一〇時から午後三時ころまで、本件理事会及び自治省選挙部課長の講演が行われている。

(三)  懇親会自体は選挙管理委員会の委員及び職員が情報を交換する場として有益であり、その際に酒代を含めて一名六〇〇〇円程度の飲食代が支出されたことを不当とはいえない。

(四)  土佐委員長が出席できないとなれば、すでに負担金を支出した以上、委員又は職員が代わりに研修会等に出席するのは当然の処置とも考えられる。

(五)  委員らが本件理事会及び研修会に参加するに際し、委員らの妻が私費でこれに同行したとしても、そのことで本件理事会及び研修会自体の意義が変わるとはいえず、かつ、出席者負担金についての連合会の請求書兼領収書(乙一)に「一〇月二四日・二五日徳島市において開催の平成二年度理事会並びに研修会出席負担金」との記載があることから直ちに本件支出行為が二五日以降の「研修視察」のためにされたものともいえない。

(六)  川谷委員が自費で本件理事会及び研修会に参加したからといって、これにより本件理事会及び研修会の公的性格が変わるものではない。

(七)  研修会で郷土芸能が演じられ、参加者に記念品(一人五三五円七五銭)が配られていても、その規模、内容からみて、研修会が遊興目的のために行われたものとはいえず、また、それらのことは主催者である連合会及び徳島市選挙管理委員会の判断で行われたことであり、桜井市選挙管理委員会が企図したものではない。

以上を総合すると、本件支出を違法とする原告の主張は採用できない。

第四 結論

以上のとおり、被告がした本件支出負担行為は適法であるから、原告の請求を棄却すべきである。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 前川鉄郎 裁判官 井上哲男 近田正晴)

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